計算の根拠と前提

FIREシミュレーターが使っている計算式と前提条件。所得税・住民税・社会保険料・年金・教育費・退職金の扱いを、出典付きで説明します。

このシミュレーターが「何を、どの数字で計算しているか」をすべて書いています。 入力画面の各項目から、この中の該当する節にリンクしています。

全体の流れ

このツールは、いまの年齢から目標年齢まで1年ずつ家計を積み上げます。 4%ルールのような単一の掛け算ではありません。

各年で次の順に処理します。

  1. その年の収入を出す(給与、退職後は副業・年金など)
  2. そこから税・社会保険料を引いて手取りにする
  3. 支出を引く(生活費、住居費、教育費、その他の支出)
  4. 残りを資産に足す、または足りなければ資産から取り崩す
  5. 資産にその年の運用リターンをかける

年齢が上がると税率も社会保険料も年金も教育費も変わります。 それを毎年計算し直すため、「平均的な支出額 × 年数」では出ない結果になります。

物価上昇は毎年の金額に反映します。表示は実質(今日の物価に直した価値)と 名目(その年の額面)を切り替えられます。

手取りの計算

額面年収から、次を引いて手取りを出します。

所得税

給与所得控除 → 基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除・扶養控除を引いて課税所得を出し、 累進税率をかけます。子どもが19〜22歳の期間は特定扶養控除(63万円)が入ります。

住民税

所得割は課税所得の10%、これに均等割が乗ります。 基礎控除は所得税の48万円ではなく43万円で、控除額が所得税とは違います。 この差を無視すると住民税を少なめに見積もることになります。

社会保険料

会社員・公務員は健康保険5.79%+厚生年金9.15%+雇用保険0.6%=15.54% (協会けんぽ・2024年度)。自営業は国民健康保険(概算7%)+国民年金保険料です。

社会保険料は全額が所得控除になるため、所得税・住民税の計算にも効きます。

退職後の収入

退職金

退職所得控除は勤続20年以下なら40万円×勤続年数、20年超なら 800万円+70万円×(勤続年数−20)。控除後の残りの2分の1が課税対象です。

失業給付(雇用保険の基本手当)

勤続年数と離職理由から給付日数と日額を出します。自己都合退職の場合は 2ヶ月の給付制限があるため、その分だけ受け取り開始を遅らせています。

副業・事業収入

雑所得として扱い、65万円の控除を引いた額が翌年の国民健康保険料の算定基礎になります。

退職後の健康保険

退職後は次のどれかを選びます。

国民健康保険は前年の所得で決まるため、退職した翌年はまだ現役時代の所得が 基準になり高くなります。その次の年から大きく下がります。 入力画面には年次別の金額を出しています。

保険料の決まり方

料率

区分所得割均等割限度額
国保 医療分7.51%4.76万円67万円
国保 支援金分2.80%1.76万円26万円
国保 介護分(40〜64歳)2.43%1.78万円17万円
後期高齢者 医療分9.88%5.33万円85万円
後期高齢者 子ども分0.26%0.13万円2.1万円

国保は東京23区(令和8年度)、後期高齢者は東京都後期高齢者医療広域連合(令和8年度)、介護保険の第1号保険料は千代田区(第9期(令和6〜8年度))の値です。料率は市区町村によって異なります。

配偶者の年齢は本人と同じものとして試算しています。 正確な金額はお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

公的年金

老齢基礎年金

満額847,300円(令和8年4月分から)を480月で割り、納付月数に応じて按分します。 退職して60歳未満の期間は国民年金保険料(月16,980円・令和7年度)の支払いが発生します。

老齢厚生年金(報酬比例部分)

標準報酬月額と加入月数から推計します。標準報酬月額の上限は65万円(第32等級)です。

「ねんきん定期便」の額を使うとき

入力画面では自動推計と手入力を切り替えられます。手入力のほうが正確とは限りません。

50歳以上の定期便には、現在の加入条件が60歳まで続いた場合の見込み額が載っています。 この額はそのまま使えます。

50歳未満の定期便に載るのはこれまでの加入実績だけの金額です。 これから納める分が入っていないため実際より小さく出ます。自動推計のほうが実態に近くなります。

繰り上げ・繰り下げ

繰り上げは1か月あたり−0.4%、繰り下げは1か月あたり+0.7%。 受け取り開始年齢を動かすと、生涯の受取総額と資産寿命の両方が変わります。

マクロ経済スライド

常に適用します。適用しない想定は非現実的なため、入力での切り替えはできません。

年金額の名目成長を max(0, インフレ率 − 0.3%) として計算します。 インフレ率が0.3%を超える年は名目では増えますが、物価上昇には追いつかず 実質的には目減りします。デフレ・低インフレ時は名目を維持します(減額しません)。

受給開始前・開始後の両方に効かせています。

教育費

金融広報中央委員会「子どもの学習費調査」のデータをもとに、 学年度ごとの教育費を積みます。学年は年度で管理しており、 早生まれかどうかで学年がずれる問題を避けています。

制度による減免はすべて自動で計算します。

奨学金

日本学生支援機構の第二種(有利子)を選べます。貸与中は教育費が下がり、 卒業後に返還が始まります。教育費のピークを後ろへ平準化する効果があります。

貸与利率が想定運用利回りを下回ると、試算上の成功確率は上がります。 教育費のピークで資産を売らずに運用へ残せるためです。 ただしこれは**借金をして投資している状態(レバレッジ)**です。 運用が想定を下回れば効果は逆転し、返済だけが残ります。 入力画面ではこの関係を明示しています。

成功確率の差がわずかなら、借りない判断も十分に妥当です。 モデルの上で有利であることと、その借金を背負う価値があることは別の問題です。

利率は貸与終了時に決まります。試算で使う利率は直近の実績値にもとづく仮定です。

大学院にも第二種を継続する前提で試算します。大学院の貸与月額は 5・8・10・13・15万円からの選択のため、学部の月額を超えない範囲で最大の額を当てます。 在学中は返還が猶予されるため、返還開始は修了後です。

借りる前に知っておくこと

奨学金は原則としてお子さま名義の借入です。試算では返済者を保護者・お子さまの どちらにも設定できますが、法律上の債務者が変わるわけではありません。

資産の取り崩し

取り崩しは預貯金 → 課税口座 → NISA の順です。 非課税の枠を最後まで運用に残すほうが、同じ取り崩し額でも手元に残る額が大きくなるためです。

課税口座の売却時には運用益に対する税がかかります。

成功確率の出し方

運用リターンは毎年同じではありません。そこでモンテカルロ法を使います。

想定利回りと変動幅から乱数でリターンの並びを作り、その並びで人生を1回まわします。 これを1,000回繰り返し、目標年齢まで資産が尽きなかった回数の割合が成功確率です。

同じ平均リターンでも、悪い年がいつ来るかで結果は変わります。 退職直後に大きく下げると、下がった資産から取り崩すことになり、 その後の回復に乗る元本が減ります(シークエンス・リスク)。 平均だけを見る試算では、この差が出ません。

暴落ストレステストでは、過去に実際に起きた下落を任意の年に当てて、 資産寿命がどう変わるかを見られます。

前提と限界

出典

計算に使っている数値の出典です。制度は毎年改正されることがあります。 最新の内容は各リンク先をご確認ください。

税金・控除

公的年金

健康保険・雇用保険

教育費・子ども支援

資産運用・iDeCo